病診連携システムにおける情報管理

病診連携システムにおける情報管理


(月刊新医療7月号に予定された 特集「医療情報システム最新動向」のための原稿)


名古屋第二赤十字病院 医療情報部
岸 真司

  1. はじめに
  2. 名古屋第二赤十字病院の事例
    1. 背景
    2. 情報管理の目的と範囲
    3. 業務分担
      1. 病診連携システム事務局の業務
        • すべての紹介状と回答書の管理・発送を集約して扱う目的で、院内の地域医療研修センターに病診連携システム事務局(以下、事務局)を設置し、職員3名を配置した【2】。
          回答書の発送はFAXあるいは郵送で行ない、FAXを優先させている。FAXは午前、午後の1日2回にまとめて発送するほか、緊急分については随時発送している。郵送のタイミングは1日1回である。
          月次業務として登録医からの紹介状に対する未回答の検索を行ない、診療科ごとの未回答患者リストを作成する。このリストは各診療科部長宛てに配布される。

      2. 初診受付、各科受付の業務
        • 登録医からの紹介状は、原則として初診受付窓口で預かり、患者ID番号、受診日、実際の受診診療科、一般外来・救急外来の別を紹介状の所定欄に記入したのち、複写用紙の1部を病診連携事務局に搬送する。新患ではない紹介患者の場合には、各科受付がこの業務をおこなう。

    4. 運用設計
    5. 運用実績
    6. 問題点と対応
      1. 運用上の問題
        • 以下のような状況では回答書に対応する紹介状の特定が困難となる結果、情報をコンピュータで管理するうえでの障害となる。いずれも院内の運用を徹底することによって対処すべき事項と考えられる。
          • 回答書の紹介状番号欄への記入漏れ
          • 紹介状を事務局へ搬送する業務の遅滞
          • 同一の紹介状に対する複数のコピーの存在
          • 回答書用紙を使った逆紹介
          • 紹介状を使った回答
          • 紹介患者と回答患者が異なる場合(産科へ紹介された妊婦から出生した新生児について小児科から書かれた紹介患者連絡票)

          以下の場合には院内で新たに紹介状を起こしているため、運用が徹底しない場合には回答書が書かれても対応する紹介状が特定できないケースが発生する。
          • 1枚の紹介状で複数の患者が紹介される場合(複数の紹介状に変換)
          • 1枚の紹介状が複数の診療科宛てである場合(複数の紹介状に変換)

          ワープロで普通紙に印刷された回答書に対しては事務局で回答書番号を記入する必要があるが、まだ少数であり、問題にはなっていない。

      2. 運用設計上の問題
        • 紹介状と回答書の関連を重視している本システムでは、回答書に対応する紹介状を特定する作業が漏れなく行なえるような運用設計が求められる。すなわち、医師が回答書を書く時点で、対応する紹介状の紹介状番号を回答書に記載できるように設計することが大切である。つまり、紹介状番号を紹介状に付与するタイミングをなるべく早くすることが重要である。
          この問題は、登録医に対してはあらかじめ連番を印刷した紹介状用紙を郵送することで解決される。しかし、登録医以外からの紹介の場合にはこの方法は使えない。そこで、受付で番号付けする方法が考えられるが、当院の場合は初診患者の受付窓口は初診受付あるいは時間外受付、再診患者は各科ブロック受付、ひいては診察室で医師に直接紹介状を手渡す場合もあり、窓口を統一しにくいために実現しておらず、事務局という情報の最下流で紹介状番号を付与しているのが現状である。この方法では、カルテに貼付した紹介状の原本には紹介状番号が付かないため、回答書を書く医師が対応する紹介状の紹介状番号を知ることができず、結果として回答書情報管理の障害を招く要因の1つになっている。情報の上流で紹介状番号を付与できるように運用設計を見直す必要があるが、医師同士の私書的な性格をもった「紹介状」の扱いについて、患者心理も考慮に含めて運用設計を考えることが望まれる。
          本システムの運用開始時点では、患者紹介は医事算定の対象外であったこともあり、純粋に情報の流れだけを考えてシステム設計を行なった。その後の診療報酬の改定に伴って、医事会計も意識したシステム設計・運用設計が求められるようになってきた。しかし、本システムではその目的ゆえに患者紹介の範囲を広く捉えているため、初診・再診の区別や複数科への紹介の扱いなどの点で医事算定上の扱いとは相違があり、強引な統合は歪みを生じる恐れがある。

      3. システム機能上の問題
        • 本システムは基本的にシングルユーザの単独システムであるため、処理可能なデータ量にはおのずと限界がある。現在コンピュータに入力している診療情報提供書の数は、システムの運用開始時と比べて2倍近くに増大している。今後、逆紹介や病病連携も含めてコンピュータで扱うためには、マルチユーザに対応するようにシステムを再設計する必要がある。
          現在のシステムでは、対応する紹介状が特定できない限り回答書を登録できない。このような回答書の入力は後回しになり、未回答紹介状を検索する段階で対応する紹介状を再検索してから改めて登録しなければならず、業務が一時期に集中する意味で問題がある。対応する紹介状が特定できない場合にはダミーの紹介状番号を与えるなどして、とりあえずの情報入力を許す機能も検討されるべきであろう。
          紹介患者の追跡調査に関しては、対象患者リストの作成までしかコンピュータ化されず、外来受診歴や診断名その他の診療内容については直接カルテに当たる必要がある。この問題に関しては、今後オーダリングシステムの導入によって入退院履歴や受診履歴、検査履歴などがコンピュータ端末から閲覧できるようになればある程度解決すると思われる。
          FAX送信業務に関しては、コンピュータを利用したFAXダイヤリングツールを1996年5月から利用するようにしてからは誤送信は無く、省力化にも有効であった。しかし、コンピュータで行なっているのはファクシミリ付属の受話器回線へのモデムを介した単純なダイヤリングだけであり、話し中の場合の自動リダイヤルができない点、複数宛先への連続送信機能が利用できない点、送信成否の記録機能が働かない点が問題点として残る。

    7. 今後の予定

  3. おわりに

  4. 参考文献

    1. 岸真司他: 病診連携システムにおける情報管理.第16回医療情報学連合大会論文集; 508-509, 1996
    2. 安藤恒三郎他: 窓口,情報の一元化でより迅速・緊密な病診連携を目指す名古屋第二赤十字病院. 病院; 50(13): 1081-1084, 1991
    3. 伊藤豊他: 病診連携システムによる機能分化と連携強化〜紹介患者追跡調査4年間のまとめ〜. 日本病院会雑誌; 42(11): 1847-1851, 1995

    1. 紹介状と回答書の流れ