システム導入の基本方針

システム導入の基本方針

最終更新:1997.7.23

  1. 確実かつ効率的なシステム導入
    1. 稼働実績のあるシステムの導入
        オーダエントリシステムをはじめとする病院情報システムは非常に大規模な統合システムであり、決して一朝一夕に構築できるものではない。オーダエントリシステムは病院の基幹業務の大部分をシステムの対象として包含するため、その成否によっては病院経営の根底に影響を及ぼし、ひいては将来的な病院業務の拡張や建築計画に影響を及ぼす危険性がある。したがって、システム導入にあたっては、信頼に耐え得る稼働実績のある基本システムを選択することが重要である。

    2. 一括した導入
        外来診療あるいは入院診療におけるオーダエントリシステムの効果を得るためには、関連するサブシステムが遅滞なく稼働開始することが重要である。中途半端なシステム化に留まった場合には、コンピュータ化によって得られるメリットが達成されない恐れがある。この意味においても、多くのサブシステムについて稼働実績がある基本システムを選択することが重要である。

    3. 段階的な拡張
        今後予想される情報技術の普及や、業務の電算化に対する院内での気運の拡充、あるいは法律の整備などに対応してゆくためには、将来的な拡張に耐え得る基本設計をもったシステムを選択することが重要である。システムを拡張するにあたっては、既に稼働している部分を資産として生かしつつ、段階的なシステム拡張が考慮されていることが望ましい。

  2. 柔軟な機能
    1. 当院の運用の特殊性に対する対応
        救急外来をはじめとする救命救急センターの夜間のアクティビティにも対応できることは、オーダエントリシステム検討の初期段階から重要な要件として掲げてきたとおりである。システム側の機能として、バックアップ作業の自動化まで含めた24時間365日の連続稼働などの配慮がなされていることが重要である。

    2. 当院の構造の特殊性に対する対応
        当院では一般外来と救急外来が距離的に離れており、これに対応すべく薬剤部、検査部、放射線科部については窓口を分けて対応している。さらに、2001年竣工予定で救命救急センター病棟を新築する計画があり、これに伴って既存病棟部分の機能配置も変化する。病院情報システムは、上記のような当院の構造の特殊性に対応し、病院全体を統合するシステムとして円滑に運用できるように配慮されている必要がある。

    3. 機能変更に対する対応
        新しい検査手段や治療方法の開発、保険診療体系の変化、ひいては社会の医療福祉体制の変化などによって、病院業務は常に変化してゆくものである。したがって、病院情報システムも仕様が固定されたものであり続けることは許されず、病院業務の変化に追従して柔軟に対応することが必要である。稼働開始後のソフトウェアの仕様変更についても、十分に配慮されたシステム設計、および契約形態であることが望ましい。

    4. オープンなシステム
        未だHL7などの標準化されたデータ転送フォーマットが普及していない我が国においては、マルチベンダの病院情報システムには機能面・費用面でのデメリットがある。一方、将来的なシステムの機能拡張をおこなうためには、一社だけですべてのシステムを開発することには無理がある。将来のシステム拡張、あるいはシステム移行が保証されるためには、オープンなシステムであることが何よりも重要である。ハードウェア面では、UNIXワークステーションに代表される業界標準の機器とTCP/IPネットワークで構成されたシステムであることが重要であり、ソフトウェア面では、標準コードが使用されない限りシステムが扱うすべての情報についてのデータフォーマットおよび転送手順が病院側に開示される必要がある。

  3. 医療情報部の役割
    1. 病院情報システムの開発における医療情報部の役割と、それを可能にするためにオーダエントリシステムの開発ベンダに求められる要件を以下に示す。

    2. イントラネットシステム
        サーバ側の技術が公開されていてクライアント側には標準的なアプリケーションが使えるイントラネットと、病院業務に特化された高度な統合システムであるオーダエントリシステムの両者は、車の両輪のごとくに相補って機能することが望ましい。イントラネットサーバについては、引き続き医療情報部で開発・管理をおこない、イントラネットサーバ独自で実現する機能についてはベンダ側の責任範囲外とする。但し、オーダエントリシステムとの機能連携が必要な部分についてはベンダは医療情報部に対して必要な助言指導をおこなう体制にあることが重要である。

    3. ベンダとの共同開発システム
        ベンダから提供されるシステムによって、病院側が要求するソフトウェア機能要件の全ては満足されない場合には、医療情報部はその能力の範囲においてベンダとの共同開発のための工数を提供する準備がある。具体的には、紹介患者連絡票情報登録システムおよび病診連携ベッド管理システムを想定している。

    4. 院内での新規開発システム
        オーダエントリシステムが導入された後も、医療情報部は従来どおり院内からの業務依頼に基づく種々のシステムの新規開発あるいは機能変更をおこなうことを業務の一部とみなす。医療情報部で開発できると判断される場合には院内開発をおこなうが、今後はオーダエントリシステムと情報連携あるいは機能連携が重要となることが必至であり、オーダエントリシステムベンダは必要な情報をオープンにするとともに、医療情報部に対して技術的な助言指導をおこなう体制にあることが重要である。

  4. 1次システムを選択する際に重視する事項
    1. 運用可能なシステムであること
      • 稼働実績があること
      • 当院の医師の使用に対応できる入力インターフェースを備えること
      • 当院の特殊性に対応すること

    2. 拡張性のあるシステムであること
      • オープンシステムであること
      • イントラネットとの連携について配慮されていること
      • 2001年稼働予定の物流センターシステムに接続できること
      • 画像情報への拡張について配慮されていること
      • 電子カルテへの拡張について配慮されていること