病院情報システムを導入する目的
病院情報システムを導入する目的
最終更新:1997.7.7
病院情報システムを導入する目的は、病院医療の質を向上させることにある。具体的な目標事項を以下に列挙する。
- 診療精度の向上
医師によって発生源で入力された指示内容が部門スタッフに伝達されることによって判読や転記の際の間違いが減り、診療精度が向上すると期待される。これは、レセプト精度の向上にも結びつくと期待される。
- 医療の適正化
コンピュータシステムに対して医師が指示を入力すれば、コンピュータ側に監査機構を組み込むことによって種々のチェックが可能となる。処方や検査の重複の防止といった比較的単純な監査から、検査データや疾患名を参照することによる禁忌薬剤のチェックのような高度なものまで、医学的に不適正な医療を防ぐものとして期待される。また、あらかじめルールをシステムに登録することができれば保険診療上の不適正な医療を防ぐことも可能となる。なお、医師による発生源入力ではそうでない場合に比べて介在するスタッフによるチェック機能が失われるため、入力時のチェック機構は重要な意味を持つ。
- 病院医療の評価
医療の結果を定量的に評価してゆくためには、評価方法をシステム化したうえでコンピュータシステムの機能を活用することが必要である。現在当院でコンピュータを用いて定期的に評価されているものには、各種の一般的な病院管理統計のほかにMRSA発生状況や病診連携システムの稼働状況などがあるが、オーダエントリシステムから得られる情報を活用することができれば評価できる事項が拡大するものと期待される。
- チーム医療の支援
比較的緊急性が低い連絡の手段として、コンピュータネットワークは非常に有効な手段となる。診療科をまたぐ医師同士の連絡手段としてはもちろん、コメディカルを含めた院内の連絡を円滑化して情報の共有化を推進することによって、より統合されたチーム医療を医療受給者に提供することが可能となる。
- 積極的な患者管理
患者管理のスケジューリング支援や、薬剤の副作用チェックのシステム化などが考えられる。また、病院情報システムの構築方法によっては、必要な場合には外来患者の検査結果を次回受診を待たずに医師に対してフィードバックするシステムが実現可能である。
- 患者サービスの向上
コンピュータを利用した部門間の情報伝達の迅速化や部門内業務の効率化などによって患者の待ち時間を短縮するばかりでなく、オーダエントリシステムの導入による再診予約率の向上は直ちに患者サービスに結びつくものと期待できる。さらに、病院情報システムを利用した患者への提供情報の充実や患者管理の質の向上も、重要な患者サービスと考えられる。
- 社会的責任の遂行
昨今の社会が病院に要求している新たな役割、すなわち診療行為の記録を利用可能な状態で長期間にわたって保持することを可能にするためには、コンピュータシステムを導入したうえで診療行為に関わる事柄を記録する体制を整える必要がある。また、近い将来に予想される電子化された診療情報の医療機関相互の共有化に対応するためには、医療機関内部で情報を電子化して扱う体制を整備したうえで、標準化に備えることが重要である。
- 病院経営の支援
オーダエントリシステムの一部である入退院登録システムや医事会計システムなどに電子的に蓄積される情報を有効に活用できるならば、病院経営のために必要とされる基礎情報の一部として重要な資料となる。